

授乳中に乳腺炎の薬は飲める? 安全な治療と母乳育児継続のポイント
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乳腺炎とは? 授乳期に起こる症状と原因

乳腺炎の主な症状
乳腺炎は、授乳中のお母さんの乳腺組織に炎症が起こる病気です。産後1週間から2か月頃に特に起こりやすく、誰にでも発症する可能性があります。主な症状としては、乳房の一部または全体に赤み・腫れ・熱感・痛みが現れ、触るとしこりを感じることもあります。さらに症状が進むと、38度以上の発熱や悪寒、頭痛、関節痛といった全身症状を伴うこともあり、まるでインフルエンザにかかったような状態になることもあるでしょう。
母乳の色が黄色っぽくなったり、乳頭から膿が出るような場合は、細菌感染を起こしている可能性があります。このような症状が見られたら、早めに医療機関を受診することが大切です。
乳腺炎が起こる原因
乳腺炎は大きく分けて2つのタイプがあります。
1つ目は「うっ滞性乳腺炎」で、母乳が乳腺内にたまって排出されずに炎症を起こすものです。授乳の間隔が不規則だったり、赤ちゃんの飲む量が少なかったり、乳管が十分に開いていない場合に起こりやすくなります。また、きつい下着で乳房が圧迫されることも原因の1つです。
2つ目は「化膿性乳腺炎」で、乳頭の傷から細菌が侵入して感染を起こすタイプです。授乳中は乳頭が傷つきやすく、そこから黄色ブドウ球菌などの細菌が入り込むことがあります。さらに、疲労やストレスで免疫力が低下していると、乳腺炎を発症しやすくなるため、睡眠不足が続く授乳期には特に注意が必要です。
授乳中でも安全に使える乳腺炎の薬
抗生物質(セフェム系・ペニシリン系)
細菌感染を伴う乳腺炎の場合、抗生物質による治療が必要になります。授乳中でも安全に使用できる抗生物質として、セフェム系(セファクロルなど)やペニシリン系(アモキシシリンなど)がよく処方されます。これらの薬は母乳への移行量が少なく、赤ちゃんへの影響はほとんどないとされています。
医師は授乳中であることを考慮したうえで適切な薬を選んでくれますので、処方された薬は指示通りに最後まで飲み切ることが重要です。途中でやめてしまうと、症状がぶり返したり、細菌が薬に対して抵抗力を持つ(耐性菌)リスクが高まります。授乳を続けながら治療できますので、自己判断で中断せず、医師に相談しましょう。
解熱鎮痛薬(イブプロフェン・アセトアミノフェン)
発熱や痛みがつらいときには、解熱鎮痛薬が処方されることがあります。授乳中でも安全に使えるのは、イブプロフェンやアセトアミノフェンです。これらは母乳への移行量がごくわずかで、赤ちゃんへの影響はほとんどありません。
ただし、市販薬を自己判断で使用する場合は注意が必要です。例えば、アスピリンは授乳中の使用が推奨されていませんので、購入前に薬剤師に「授乳中でも飲める薬」であるか確認してください。発熱や痛みは体が炎症と闘っているサインですので、無理をせず休息を取ることも大切です。
漢方薬(葛根湯など)
乳腺炎の初期症状には、漢方薬の「葛根湯」が効果的な場合があります。葛根湯は体を温めて血行を促進し、炎症を和らげる働きがあります。授乳中でも安全に服用でき、母乳への影響はほとんどありませんので、病院だけでなくドラッグストアでも購入できます。
ただし、漢方薬は症状が軽いうちに飲み始めることが重要です。発熱や強い痛みがある場合は、葛根湯だけでは不十分なこともありますので、早めに医療機関を受診してください。漢方薬と抗生物質を併用する場合もありますが、必ず医師や薬剤師に相談してから服用しましょう。
薬を飲んでも授乳は続けられる?赤ちゃんへの影響

母乳への薬の移行について
「薬を飲んだら授乳をやめないといけない」と思っているお母さんは多いのですが、実際には授乳中でも安全に使える薬がたくさんあります。薬の成分が母乳に移行する量は、服用した量のわずか1〜2%程度であることがほとんどです。医師が処方する薬は、授乳への影響を考慮して選ばれているため、過度に心配する必要はありません。
ただし、薬によっては授乳を一時的に中断したほうが良い場合もあります。処方される際に「授乳中であること」を必ず伝え、薬の影響について医師や薬剤師に確認しておくと安心です。また、薬を飲むタイミングを授乳直後にすると、次の授乳までに薬の血中濃度が下がるため、より安心して授乳を続けることができるでしょう。
授乳を続けることの大切さ
乳腺炎になったときこそ、授乳を続けることが大切です。赤ちゃんにしっかり母乳を飲んでもらうことで、乳腺内にたまった母乳が排出され、症状の改善につながります。「細菌感染しているのに母乳をあげて大丈夫?」と心配になるかもしれませんが、母乳には殺菌作用があり、赤ちゃんの胃酸でさらに細菌は無害化されるため、ほとんどの場合問題ありません。
ただし、乳房の痛みが強くて授乳がつらい場合は、無理をせず搾乳器を使うのも1つの方法です。搾乳した母乳は冷蔵または冷凍保存ができますので、体調が回復してから飲ませることもできます。授乳を急に中断すると、かえって症状が悪化することもありますので、医師の指示に従いながら、できる範囲で授乳や搾乳を続けてみましょう。
こんな症状が出たら受診を!病院に行くタイミング
軽度の症状と重度の症状の見分け方
乳腺炎の初期段階では、乳房の一部に軽い痛みやしこりを感じる程度のこともあります。この段階であれば、自宅でのセルフケア(授乳・搾乳・冷罨法など)で改善することも少なくありません。しかし、以下のような症状が現れたら、すぐに医療機関を受診してください。
受診が必要な症状
- 38度以上の高熱が続く
- 乳房全体が赤く腫れて強い痛みがある
- 乳頭から膿や血液が混じった分泌物が出る
- 悪寒や関節痛など全身症状がある
- セルフケアを2〜3日続けても改善しない
特に、発熱を伴う場合は細菌感染が疑われますので、早めの治療が必要です。放置すると乳腺膿瘍(膿がたまる状態)に進行し、切開して膿を出す処置が必要になることもあります。少しでも不安があればご相談ください。
何科を受診すればいいの?
乳腺炎の診察は、乳腺外科・乳腺科が専門です。しかし、近くにない場合は、産婦人科や助産院でも対応してもらえることが多いでしょう。当院のような産婦人科では、授乳期のトラブルにも対応していますので、お気軽にご相談ください。
受診の際は、いつから症状が出たか、どのような痛みか、授乳の状況(頻度や赤ちゃんの飲む量)などを伝えると、スムーズに診察が進みます。また、使用している薬やサプリメントがあれば、それも忘れずに伝えましょう。夜間や休日に症状が悪化した場合は、救急外来を受診することも検討してください。
自宅でできる乳腺炎のセルフケアと予防法

授乳方法の見直し
乳腺炎を予防・改善するには、授乳方法を見直すことが重要です。まず、左右の乳房をバランスよく飲ませるようにしましょう。片方だけに偏ると、飲まれない方にうっ滞が起こりやすくなります。また、授乳の姿勢を変えることで、飲み残しが少なくなることもあります。縦抱き・横抱き・フットボール抱きなど、いろいろな抱き方を試してみてください。
授乳の間隔が空きすぎると、母乳がたまって乳腺炎のリスクが高まります。理想的には3時間おきに授乳するのが良いとされていますが、赤ちゃんのリズムもありますので、無理のない範囲で調整してみましょう。赤ちゃんがあまり飲まない場合は、搾乳して乳房の張りを和らげることも効果的です。
乳房マッサージと休息
乳房マッサージは、血行を促進し、母乳の流れをスムーズにする効果があります。ただし、強く揉みすぎると乳腺組織を傷つける恐れがありますので、優しく圧迫するように行いましょう。授乳前に温かいタオルで乳房を温めてからマッサージすると、より効果的です。
また、乳腺炎は疲労やストレスが原因で起こることもあります。育児で忙しい毎日ですが、できる限り休息を取り、栄養バランスの良い食事を心がけてください。水分もしっかり補給しましょう。家族に協力してもらい、少しでも睡眠時間を確保することが、乳腺炎の予防につながります。
まとめ:乳腺炎の薬と授乳の両立について

乳腺炎になっても、授乳を続けながら治療を受けることは十分可能です。授乳中でも安全に使える抗生物質や解熱鎮痛薬、漢方薬がありますので、医師の指示に従って服用しましょう。薬を飲むことに不安を感じるかもしれませんが、母乳への移行量はごくわずかで、赤ちゃんへの影響はほとんどありません。
大切なのは、症状が軽いうちに対処することです。乳房に痛みやしこりを感じたら、早めにセルフケアを始め、改善しない場合は医療機関を受診してください。授乳方法の見直しや十分な休息も、乳腺炎の予防に役立ちます。
授乳期はお母さんの体にも大きな負担がかかる時期です。少しでも不安があれば、一人で抱え込まずにご相談ください。






