

妊娠中の運動|安全な始め方と時期別の注意点
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妊娠中の運動がもたらすメリットとは?

適度な運動は妊婦さんの心と体を支え、健やかなマタニティライフの土台になります。まずは「なぜ妊娠中に体を動かすとよいのか」から見ていきましょう。
妊娠中の運動で期待できる健康効果
妊娠中の運動は、医師の許可のもとで無理なく行うことが前提です。妊娠中は血液量が増え、心臓や血管への負担が大きくなる時期ですが、ウォーキングやマタニティヨガのような軽い有酸素運動には、次のような働きが期待できます。
- むくみや腰痛の軽減
- 妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスク低減
- 出産に向けた体力・持久力づくり
- 便秘の予防や気分のリフレッシュ
ただし、もともと運動習慣がない方が急に激しい運動を始めるのは禁物です。ある調査では、妊娠前に身体活動量が低かった女性は51.7%、妊娠中はさらに64.5%にのぼったと報告されています[出典1]。多くの妊婦さんが運動不足の状態でこの時期を迎えているからこそ、「無理のない範囲で少しずつ」が最初の一歩になります。
体重管理とストレス解消への働き
妊娠中の体重増加は赤ちゃんの発育に欠かせませんが、増えすぎると妊娠糖尿病や難産のリスクが高まる場合があり、逆に少なすぎても低出生体重児のリスクが指摘されます。増加量の目安は妊娠前のBMIによって異なり、普通体重の方であればおおむね10〜13kgが一つの目安とされています。運動の役割はカロリー消費だけではありません。血糖値の急な上昇をやわらげたり、筋肉量を保って基礎代謝の低下を防いだりする役割もあります。食事管理だけに頼らず運動と組み合わせることが、適正なペースを保つコツです。
また、妊娠中はホルモンバランスや体形の変化、出産への不安から気持ちが揺らぎやすい時期でもあります。ウォーキングで外の空気を吸ったり、呼吸を意識したストレッチをしたりすると気分転換しやすくなり、睡眠リズムを整えるきっかけになることもあります。体調がすぐれない日は、休むことも大切です。無理をせず、心地よいと感じる範囲で続けてみましょう。
時期別・妊娠中におすすめの運動

時期に合わせた運動選びが、無理なく続けるための一番の近道です。体調の変化が大きい妊娠期は、「今の自分に合っているか」を基準に選んでいきましょう。時期ごとの目安を表にまとめました。
時期 | おすすめの運動 | 時間・頻度の目安 |
妊娠初期 | 短時間のウォーキング、軽いストレッチ | 1回10〜15分/体調のよい日 |
妊娠中期 | ウォーキング、マタニティスイミング、マタニティヨガ | 1回20〜30分/週2〜3回 |
妊娠後期 | 平坦な道でのウォーキング、軽いストレッチ | 1回15〜20分/こまめに休憩 |
妊娠初期に適した運動
妊娠初期はつわりやホルモンバランスの変化で、体調が読みにくい時期です。激しい運動よりも、体への負担が少ないものを選びましょう。おすすめは短時間のウォーキングです。10〜15分ほど平坦な道を歩くだけでも血流がよくなり、気分転換につながります。隣の人と会話できるくらいの速さを保ち、息が上がるペースは避けてみてください。つわりがつらい日は無理をせず、体調のよい日だけ肩や腰まわりをほぐす軽いストレッチから始めると、続けやすくなります。転倒しやすい場所や人混みは避け、水分補給もこまめに行いましょう。
妊娠中期・後期におすすめの運動
妊娠中期に入りつわりが落ち着くと、ウォーキングに加えてマタニティスイミングやマタニティヨガも取り入れやすくなります。水中運動は浮力で体重の負担が軽くなり、腰やひざへの負担を減らしながら全身を動かせるのが魅力です。体調に問題がなければ、医師に確認したうえで1回20〜30分程度を目安に、週2〜3回ほどから無理なく取り入れるとよいでしょう。
妊娠後期はお腹の張り出しでバランスを崩しやすくなります。スピードよりも安定性を重視し、手すりのある場所や平坦な道を選びましょう。歩く時間は15〜20分にとどめ、こまめに休憩を挟むと負担を抑えられます。お腹の張りを感じた場合は、無理をせずすぐに中止しましょう。
自宅でできる簡単なエクササイズ
外出が難しい日は、自宅でできるエクササイズを取り入れてみましょう。椅子に座ったまま行う足首回しやかかとの上げ下げは、むくみ対策として取り入れやすい動きです。1セット10〜15回を目安に、テレビを見ながらでも続けられます。床に座って行う骨盤まわりのストレッチも人気です。あぐらの姿勢で背筋を伸ばし、ゆっくり呼吸をしながら上体を左右に傾けるだけでも、腰まわりの緊張がほぐれていくでしょう。動きは小さく5〜10分程度で十分です。壁や椅子の背もたれなど、ふらついてもすぐ手をつける支えを近くに置いて行うと安心です。
妊娠中の運動で注意したいポイント
どんな運動も、始める前の確認と体調観察を怠らなければ、安心して続けられます。安全に楽しむための3つのポイントを押さえておきましょう。
運動を始める前に確認すること
運動を選んだあとでも、体を動かす前に妊婦健診で医師に相談しておきましょう。切迫流産や切迫早産の兆候、前置胎盤、妊娠高血圧症候群といった診断がある場合、運動の可否や強度は一人ひとり変わってきます。妊娠初期は流産リスクが比較的高い時期にあたるため、自己判断で始めずに医師の許可を得ておくと安心です。あわせて、その日のコンディションもチェックしておきましょう。
- 前夜の睡眠がとれているか
- 食欲やつわりの調子はどうか
- むくみやお腹の張りはないか
お腹が大きくなるにつれ重心が前に移動するため、滑りにくいソールの靴と、体を締め付けないウェアを用意しておくと、思わぬ転倒を防ぎやすくなります。水分補給用のドリンクを持参する習慣もつけておきましょう。
妊娠中に避けたい運動
意欲的になるあまり、体に負担の大きい運動を選んでしまうケースも見られます。避けたいのは、腹部に強い衝撃が加わる運動や、転倒リスクの高い動きです。
- バスケットボールやテニスなどの対人スポーツ
- スキーやスケートなどバランスを崩しやすい競技
- 腹筋を強く収縮させる激しい筋力トレーニング
- ジャンプや急な方向転換をともなう運動
また、あおむけで長時間行うトレーニングは、大きくなった子宮が下大静脈を圧迫し、めまいや息苦しさを招くことがあるため、中期・後期のメニューからは外すのが無難です。サウナや高温のホットヨガのように体温が過度に上がる環境、ダイビングのように気圧が変化する活動も、胎児への影響が懸念されるため控えましょう。
運動中の体調変化のサイン
運動を続けるうえで何より大切なのは、体からのサインを見逃さないことです。次のような症状が現れたら、すぐに運動を中止して安静にしてください。
- 不正出血
- 強いお腹の張りや痛み
- 動悸、息切れ、めまい、頭痛
症状が治まらない、あるいは繰り返す場合は、迷わずかかりつけの産婦人科にご連絡ください。「これくらいなら大丈夫」と我慢してしまう方も少なくありませんが、体調の変化は早めに対応するほうが、結果的に安心して運動を再開できます。心拍数の上がりすぎや過度な疲労感にも気を配り、違和感があれば中断する姿勢を保ちましょう。
妊娠中の運動に関するよくある疑問
疑問や不安は一人で抱え込まず、体調と相談しながら少しずつ解消していきましょう。ここでは、特に多く寄せられる3つの疑問にお答えします。
妊娠初期に運動しても大丈夫?
運動そのものが禁止されているわけではありませんが、始めてよいかどうかは、そのときの体調と妊娠経過によって変わります。目安として、次のように整理できます。
- 始めやすい状態:体調が安定していて、出血や強い腹痛がない。日常生活を普段どおり送れている
- 控えたい状態:出血や強い腹痛がある、切迫流産と診断されている、医師から安静の指示を受けている
体調が安定していれば、家の周りを10分ほど歩く、肩や股関節をほぐすストレッチをする程度から始められることがあります。ただし妊娠12週前後までは胎盤が安定していない時期のため、心拍数が大きく上がる激しい運動は避けたほうが安心です。妊娠初期は体調の変化が大きいので、健診の際に医師へ確認してから始めましょう。初期は体を慣らす準備期間ととらえ、生活リズムを整えることを目標にするのがおすすめです。
運動不足が及ぼす影響とは?
運動不足は妊娠中の体重増加や腰痛、便秘、むくみを悪化させやすく、出産に向けた体力の低下にもつながります。見過ごせないのが、出産後まで続く活動量の低下です。ある調査では、妊娠前に身体活動レベルが低かった女性は51.7%だったのに対し、妊娠中は64.5%、産後1.5年では92.0%にまで達したと報告されています[出典1]。産後3.5年の時点でも65.3%が低い活動量のままで、出産時の年齢が高いことや、妊娠前・妊娠中から運動習慣が乏しかったことが、活動量の戻りにくさの要因として挙げられています[出典1]。妊娠中の運動不足はその場限りの問題ではなく、産後の生活にも影響しうるのです。妊娠中から無理のない範囲で体を動かす習慣をつけておくことは、産後の体力回復にもつながります。妊娠前からの体づくりに関心のある方は、あわせて次の記事もご覧ください。
医師に相談するときのポイント
運動を始める前は、健診の際に「どんな運動を」「どのくらいの強度・頻度で」行いたいかを具体的に伝えてみてください。たとえば「中期からウォーキングを1日20〜30分、週3回くらい始めたい」のように伝えると、医師も答えやすくなります。妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、切迫早産の既往がある方、多胎妊娠の方は、運動の可否や強度について個別の判断が必要になる場合があります。運動中に不正出血や規則的なお腹の張り、破水感、めまいや動悸を感じたときは、我慢せずすぐに中止し、症状が続くようなら早めに医療機関へご連絡ください。相談内容をパートナーとも共有しておくと、いざというときに落ち着いて対応できるでしょう。
手軽に始められるウォーキングのコツ

数ある運動の中でも、ウォーキングは妊婦さんにとって取り入れやすい選択肢です。特別な道具も費用もいらず、近所を歩くだけで始められる手軽さが魅力ではないでしょうか。時期に合わせて、次のように調整してみましょう。
- 妊娠初期:つわりの様子を見ながら1回10〜15分程度から。体調がすぐれない日は無理せず休みます
- 妊娠中期:1回20〜30分、週3〜4回を目安に、歩く距離を少しずつ伸ばします。お腹の張りを感じたらすぐに切り上げましょう
- 妊娠後期:1回15〜20分にとどめ、平坦で人通りのある安全な道を選びます
転倒しやすい砂利道や坂道、雨の日の歩行は避けたほうが安心です。靴選びも意外と大切なポイントで、クッション性があり、かかとが低く安定するスニーカーを選ぶと足腰への負担が減ります。水分補給を忘れず、日中の暑い時間帯を避けて歩けば、体への負担をさらに軽くできるはずです。「今日は気持ちがいいな」と思える範囲で、少しずつ習慣にしていきましょう。
まとめ|体調と相談しながら、無理なく続けましょう
ここまで、時期別のおすすめや注意点をお伝えしてきました。妊娠中の運動は、「体への負担が少ない種類を選ぶこと」と「体調をよく観察すること」の両立が何より大切です。妊娠初期は軽いストレッチやウォーキング、中期・後期はマタニティヨガやスイミングなど、無理のない運動から少しずつ始めてみましょう。少しでも異常を感じたときは、すぐに中止することも忘れないようにしましょう。
とはいえ、体調や持病、妊娠の経過によって適した運動は一人ひとり異なります。「この運動を続けても大丈夫かな」「どのくらいの強度がいいのだろう」と迷ったときは、自己判断せず、妊婦健診の機会などにかかりつけ医へご相談ください。パートナーと一緒に取り組めば、体調の変化にも気づきやすくなります。当院でも、妊娠中の過ごし方や運動についてのご相談をいつでもお受けしています。不安を一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。
【参考文献】
[出典1] 日本人女性における妊娠・出産・育児に伴う身体活動量の経時変化 — https://www.jstage.jst.go.jp/article/ree/23/1/23_2020/_pdf/-char/ja








